初めての方へ

ケース2 双極性障害

(架空の典型例です)

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症例

Tさんは38歳の会社員です。若いころから数日から月単位で気分が沈みがちとなり、そのほかに極端にお喋りで活発になる時期がときどきあったということです。

3週間くらい前に突然スイッチが切れたように起きられず、以来会社を休み続けるため受診しました。強い眠気も感じます。入浴も億劫で何も手につかないのですが、かといってじっとしているのもつらいと言います。若いころから数日から1週間くらい不調な日が続きましたが、こんなに長く続いてしかも会社にいけないのは初めてです。

よく思い起こしてみると、2カ月くらい前は非常に活発で多くの仕事をこなして上司からも喜ばれていました。頼まれれば何でも解決できるとすら感じていました。夜は遅くまで勤務していましたが、眠りたいとはあまり感じませんでした。仕事の成績は上昇気流にのっていましたが、やや自己主張が過剰で、ときに攻撃的となるため、奥さんとの衝突は増えていました。今でもその当時はただ「調子がよかっただけ」で、「自分は正しいことを言っていた」と思っています。

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院長からのコメント

双極性障害は躁うつ病と呼ばれ、Tさんのよりも躁症状がまとまった長期に、激しい形で持続しているものが典型例とされていました。現代では、こうした重症型を双極I型障害とよび、Sさんのように躁状態が軽度であるケースを双極II型障害と呼んでいます。クリニックでは双極II型障害と診断され通院する方が多く見受けられます。ただし、患者さんは気分がすぐれない、意欲が出ないといううつ状態のときにしか積極的に治療を求めない傾向があり、躁症状が軽症な場合には自分では正常ととらえているため、「再発性うつ病」と診断されていることが多いという実態があります。米国のある研究では、双極性障害が正しく診断されるまで初診から平均で10年を要していたと報告されています。

うつ病と双極性障害ではとくに薬物治療が大きく異なりますので、双極性障害を有する方は、とくに早期に正確な診断を受け病態にあった治療を受けることが重要です。